13年目のやさしい願い
「……え?」
「ん?」
わたしの身体が硬直したのを感じて、パパは怪訝そうにわたしを見た。
「なんだい? もしかして、別のクラスだったとか?」
パパの眉間にしわが寄っている。
わたしに聞き返したはずなのに、目はわたしを見ていない。
遠くの誰かを見ている目。
「……パパ?」
「ちゃんと頼んでおいたのに、小暮くんは、何を考えてるんだ?」
つぶやくように口から出た、その言葉。
だけど、そこにはかすかに苛立ちが含まれていて。
……小暮くん。
…………小暮……学園長。
直接には話したこともない、遠い存在。
……聞きたくない言葉を聞いた気がした。
無意識なのか、ポケットに手を入れて、電話を探るパパ。