13年目のやさしい願い
「……陽菜ちゃん、ごめんなさい」
一ヶ谷くんは、ずいぶんと長い沈黙の後、静かにそう言って深々と頭を下げた。
素直に謝られると、反射的に「いいよ」と言いそうになる。
でも、「ごめんなさい」だけじゃ、一ヶ谷くんが何に対して謝ったのかが分からない。
きっと、例の女の子のことだとは思う。
お兄ちゃんがわざわざ来るようなことじゃないのにね……って言ったら、カナが教えてくれた。
よその学校の子が忍び込んだんだよね?
あの時、あの子と一緒にいた一ヶ谷くんは、しきりに、わたしから目を反らしていた。
「何に、謝っているの?」
さすがに憤りを感じていたけど、それでも努めて優しく問いかけると、一ヶ谷くんはゆっくりと下げた頭を元に戻した。
それでも、まだ目は合わせてくれなかった。