13年目のやさしい願い


だって、今まで一度だって、パパはこんなことを言ったことはないんだもの。

パパが何にもなしに、こんなことをするなんて、思えないんだもの。

いくら、わたしのためだからって、そんなムチャを通そうとする人じゃないのに……。



「でも、オレは自分の考え、曲げないからな!」



カナの言葉が脳裏に浮かぶ。

あの日、こんな捨て台詞を残して、わたしの部屋を出ていったカナ。

あれから、もう一度やってきて、今度は優しい声で、わたしに前言撤回を頼んだ。



わたしはそれを断った。



はじめてのケンカだと思って心を痛めていたのに、数日後には、カナは何事もなかったかのような顔で、うちに遊びに来た。

何となく、お互いにぎこちなかったけど……。

それは、ケンカの後だからだと思っていた。



カナはそれ以上、わたしに何も言わなかったから……



あきらめたのかと思っていた。

あきらめたんだと思ったのに。


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