13年目のやさしい願い
その晩、夢を見た。
わたしは、いつもの特別室のベッドの上。
定期検診の後に、病室にお見舞いに来てくれた瑞希ちゃん。
その隣には、笑顔の裕也くん。
瑞希ちゃんが、一冊の本を差し出した。
「これ、わたしが子どもの頃に読んでた本。読んだこと、ある?」
「ううん」
「よかった! じゃあ、これ、陽菜ちゃんにあげる。読んでみて」
「まだ、陽菜ちゃんには難しくない?」
裕也くんが横から口を挟んだ。
瑞希ちゃんがくれた本は少し文字が小さくて、挿し絵も少なくて、確かに7歳のわたしには、まだ難しかった。
「すぐに読めるようになるわ。ね?」
「そうかぁ?」
裕也くんは怪訝そうだったけど、瑞希ちゃんは笑顔。
わたしは、大きな子の本を読めるって言ってもらえたことが、なんだか、すごく嬉しくて、
「ありがとう!」
って、その本を受け取った。
中学生の瑞希ちゃんや、高校生の裕也くんとの懐かしい会話。
どこか現実離れした感覚を覚えながらも、
何かおかしいって感じながらも、
夢の中で、わたしは小学生に戻っていた。