13年目のやさしい願い
翌日は入学式だった。
自分が入学するわけでもないし、生徒会に入ってるわけでもないから、わたしはただ参列するだけ。
いつもと同じ時間に学校に着けば十分だった。
だけど、どうしてもカナに会いたくなくて、いつもより30分早く家を出た。
ちょうど運転手さんがパパを会社まで送りに行っていて不在だったので、
沙代さんが慌てて、おじいちゃんのところの車を手配してくれた。
出がけにカナに送った、今日はお迎えはいらないってメール。
返事はまだ来ていない。
車が学園に到着し、いつもの裏門を入ると、窓越しに満開の桜が目に入った。
ドアを開けてもらって外に出ると、まだ少し肌寒い空気が頬をなでる。
「ありがとうございました。おじいちゃんによろしく伝えてください」
「かしこまりました」
運転手さんの笑顔に送られ、裏口に向かった。
三段ばかりの階段を上がり、振り返ると、乗ってきた車がちょうど門を出るところだった。
視界の端に見えたのは、校舎沿いに植えられた桜の木。
まだ時間はある。
……30分も早く来たんだもの。