13年目のやさしい願い


一ヶ谷くんは、もう来ない。



わたしは、今日も、カナと一緒に裏口から教室までの廊下を歩く。

並んで、手をつないで、ゆっくりと歩く。



「カナ」

「ん? どうした?」



返ってくる優しい声と、カナの笑顔。

それが幸せで、本当に幸せで、思わず笑顔がこぼれ落ちる。



「……ん? ハル?」



カナの言葉に答えず、そっと自分の腕を、カナの腕に絡めた。



カナが嬉しそうに笑った。



また、穏やかな日常が戻って来た。

わたしが願ったような、穏やかで暖かい、ひたすらに優しい時間が。

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