13年目のやさしい願い


そのまま登った階段を降りて、校舎の外壁を回り込み、引き寄せられるように中庭の大きな桜の木の下に向かった。



大きな枝の下から見上げると、空はまた抜けるように青くて、その青を背景にした桜の花はとても綺麗で……。



なぜか胸が痛くて。



どうして青い空が綺麗な春は、悲しいことが多いんだろうな、って。



目が潤むのが分かり、わたしはギュッと両手を握りしめた。



カナに会いたくない、そんなことを思う日が来るなんて思ってもいなかった。

嫌いになんて、なっていない。

今だって大好きだ。



でも、なぜか会いたくなくて……。



今はまるで分からないけど。

どうすれば、この気持ちに折り合いがつけられるのか、まるで分からないけど……。



一年前のあの時も、

いつまでも抜け出せない迷路のようなところに迷い込んでいた。

けど、ちゃんと抜け出せたから……。



今度もどこかに抜け道があるはずだから……。

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