13年目のやさしい願い
ハルは走れない。
早歩きもできない。
こんなところで、お姫様抱っこは論外だろう。
時間は余裕を見た方が良い。
オレは、スッと立ち上がり、それから、ハルに手を貸すふりをして、ハルの唇に素早くキスをした。
ハルが驚いたように、オレを見返した。
でも、ハルは怒らずに、もう、と小さい声で言うと、まるで花が開くようにふわあっと笑った。
「ハル、大好きだよ」
「……わたしも。カナ、大好き」
木漏れ日に照らされたハルの笑顔が、あまりにキレイで、
つないだ手のぬくもりがたまらなく幸せで、
公園の木立の中を歩きながら、
オレの心は、かつて感じたことがないくらいの、幸福感で満たされていた。
(完)