13年目のやさしい願い
「……あの」
……え?
桜の木の下、不意に声をかけられて、慌てて振り返った。
ここは裏門からほど近い中庭で、人が来るような場所ではない。
駐車場は教師専用。
原則、初等部以上は車での送迎は禁止されている。
わたしは心臓に持病があるからと、特例で車通学を許可してもらっていて、
車寄せがあって、校舎にすぐ入れる、この裏口から毎日、出入りしている。
だから、こんなところで自分以外の人に会うことはほとんどない。
ううん。わたしとカナ以外の……。
カナは毎朝、わたしより早くに家を出て、裏口までわたしを迎えに来て、帰りもここまで送ってくれるから。
目の前にいるのは先生ではなく、うちの制服を着た男の子だった。
見るからに真新しい制服を着た男の子。
身長は決して低くはないのだけど、まだ伸びると踏んでか、少し大きめの制服を着ているから新入生だと一目で分かった。