13年目のやさしい願い

……なにを悠長に失恋に浸ってた?

オレは……最低だ。

再度、目の前の男性に向かって頭を下げた。
心の中では、陽菜ちゃんに。

きっと、この人は陽菜ちゃんの代理人だ。

春の陽射しのように穏やかな陽菜ちゃん。
お兄さんは陽菜ちゃんとは似ても似つかない人みたいだけど、彼はきっと不甲斐ない自分を、陽菜ちゃんの代わりに正しに来た……。



「何に頭を下げてる?」

「……約束を実行できていないことに」



お兄さんはようやく冷たい笑みを崩して、真顔になった。



「自分で責任を取れないようなことは二度とするな。約束は守れ」

「はい」



軽々しくは答えられない。
オレは精一杯真面目な顔で頷いた。



「じゃあ、早速、篠塚に電話してもらおうか」

「…………は?」

「ケータイは?」



言われて、その意味を考えることなく、ポケットからスマホを出してしまった。



「電話帳出して」



意味を考えるまでもなく、言われるままに電話帳を開く。

しまった、と思った時には、もう遅かった。

お兄さんはオレの手からスッとスマホを取り上げると、慣れた様子で操作する。

何が起こっているのか分からない間に、気がつくとスマホを突き出されていた。



「出て?」

「え?」

「篠塚に電話かけたから」

「ええ!?」



と大声を上げたところで、スマホが繋がってしまった。

ああああ、なんでスマホ渡したんだよ、オレ!!



「何の用?」



電話の向こうに不機嫌な声。
まぎれもない聞きなれた篠塚先輩の声だった。
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