13年目のやさしい願い
3.3つの切り札
そして、日曜日。
オレは学校にほど近い駅前の和風ファミレスのイスに座っていた。
「で? いったい何の用? 衛(まもる)先輩のことって何なの?」
衛とは、篠塚先輩が片想いしていた、オレの2つ上の兄貴の名前だ。
席に着くやいなや、さっさと話せとばかりに篠塚先輩はまくし立てた。
本当に、何かにつけてせっかちな人だ。
とは言え、今回に限っては、篠塚先輩がいい加減痺れを切らすのも仕方ないのかもしれない。
何しろ兄貴を口実にして呼び出し、その後、メールに電話に、何度聞かれても、ひたすら詳しくは直接会って話したい……としか言っていないのだ。
と言っても、申し訳なくも、兄貴の話はただの呼び出す口実だから、何の話かと聞かれても答えることはできないんだ。
この後は、ひたすら先日の陽菜ちゃん襲撃事件の落とし前を付けるのだ。
そう落とし前……。
陽菜ちゃんの願いは、念押ししておいて欲しいというだけだった。
のに、落とし前。
随分と物騒な状態だ。
広瀬先輩曰く、「さっさとしないから、利息が付いたんだろ」とのこと。
電話一本で済む話をこうも大きくしてしまったのは、間違いなく自分だ。つまり、自業自得。
しかし、なんでオレが何もやっていないと分かったんだろう?
篠塚先輩に会っていないことは分かるかもしれないけど、電話で済ませたってのはありだろ?
……いや、問われて、何もしていないのを早々さらけ出したのは他ならぬオレか。
何より、篠塚先輩は悪巧みを続けていたわけだし……。