13年目のやさしい願い
先輩は、何言ってんのコイツ……という顔をした。
考えてることダダ漏れ過ぎだ。
「今更、何!? 近付くはずないじゃない!」
「ですよね〜!」
オレの引きつった愛想笑い、篠塚先輩は気に入らないらしく、更に怒りのオーラが燃え盛る。
「てかさぁ、もしかして、今日の用事ってそれ!?」
「あ、いえ、それだけじゃないです」
「ふーん。で?」
「嫌がらせも、悪口言いふらしも禁止です」
一瞬、気勢を削がれた篠塚先輩、顔を真っ赤にして声を荒らげる。
「あんたねぇっ!!」
先輩、図星刺されて怒り狂うなんて、分かりやすすぎだって……。
怒って立ち上がった先輩を見て、なんで、この人に指図されて、言うことを聞いてしまったんだろうと思った。
「先輩が塾の友だちとか、学校の友だちとかに、陽菜ちゃんと広瀬先輩の悪口を言い触らして、悪評を立てようとしてるの……オレ、知ってます」
そう。
二度と近付かないとは言っても、遠くから石を投げるくらいは平気でやるんだ、この人は。
基本、オレを歯牙にもかけない篠塚先輩と会話を成り立たせるための、これが1枚目の切り札。
篠塚先輩の所業をレポートにまとめたものを見せられ、心底驚いた。
篠塚先輩の執念深さと、
明らかに金がかかっていそうなプロ仕様の精緻な報告書に。
ついでに言うと、篠塚先輩だけじゃなく、一般的に女子には、平気でそうやって自分を正当化しようとする人間が多いのだと広瀬先輩から教えられて、更に驚いた。
てか、女子を見る目が変わった気がする。