13年目のやさしい願い

そうか、あれはワザとだったのか……。
目から鱗というか、驚きすぎて目が点というか……。

だいたい、人の心の機微に敏感なくせに、どうして色恋が絡むと、ああも武骨なのかと思ったら……。

だよな。
あれだけの露骨なアピール、気付かないわけないよな……。

ガラガラ崩れる兄貴のイメージ。
だが、兄貴はよっぽど腹に据えかねたのか、一切手を抜くことなく、篠塚先輩を追い詰めていく。



「ほんの少しばかり、顔の作りが恵まれていたからって、それが何なんだ?

外側の作りが若干良かったとしても、中身が腐っていたら魅力がないどころか、ただの生ゴミだ」



……生ゴミって、兄貴。

気持ちは分かるけど、さすがに先輩が気の毒になった。

兄貴は先輩をしかと睨みつけた。



「人が築き上げた幸せを盗もうとするな」



先輩の表情は石のように固く、顔色は青ざめていた。



「自分から何の行動も口にせず、思わせぶりな態度だけ取り、何かが起こるのを待つのが悪いとは言わない。

その気持ちが偽物だとも言わない。

だけど、それを言い訳に使ったら終わりだろ」



次々に容赦なく繰り出される糾弾の言葉に、わなわなと震えはじめる先輩。

兄貴のお説教は、至極真っ当なことばかりだった。

だけど、兄貴は従来、一触即発の危険な空気も機転の効いた一言でおさめ、場の空気を明るくさせるような穏健派。
だから、こんな厳しく人を責め立てる、追い詰めるところなんて初めて見た。

こんな言い方もできるんだ。

正直、今日は驚かされてばかりだ。
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