13年目のやさしい願い
「牧村さんは、どんなものが好き? お菓子で大丈夫そう? 和菓子か洋菓子か? 洋菓子ならケーキが良いのか、焼き菓子が良いのか分かる? あー、それより、ここらに気が利いた店があったかの方が問題か?」
兄貴は一人でどんどん話を進めて行く。
この間、兄貴はずっと立ったままだ。
正直、かなり目立つ……かと思いきや、店の奥まった一画、壁際の席なので意外なことに注目は集めていない。
「篠塚さん。君なら知ってるよね? この駅周辺で、手土産になりそうな美味しいお菓子を売ってる店はどこ?」
篠塚先輩は呆気にとられながらも、店名を幾つか挙げていく。
おい、本気で土下座しに行く気か!?
いや、先輩もきっとオレと同じだ。ただ単に、兄貴の迫力に飲まれて、聞かれるままに答えてるんだ。
「じゃあ、行くか!」
と兄貴が言ったところで、隣から困った顔をした広瀬先輩がやって来た。
「お兄さん、ちょっと待った」
「広瀬くん、ちょうど良いところに来てくれた!」
兄貴は満面の笑みで広瀬先輩を迎えた。
反対に篠塚先輩の表情は凍った。
なぜコイツがここに……って思いと、だからオレがこんな会合を企画したんだと言うのを悟ったと思う。
兄貴と一緒に話が聞こえる場に待機していたことも察しただろう。
ただ、先輩も更にもう一人、陽菜ちゃんのお兄さんが待機しているのは気付いていない。
あの人が登場したら、きっとこんな可愛らしい話じゃ済まないという確信があった。
杜蔵の校長から篠塚先輩とこの校長に厳重抗議が行く……くらいが、多分一番軽いお仕置きだ。
場合によっては、あの人は弁護士立てて訴えて来るだろう。