13年目のやさしい願い
「牧村さんのところに、今から謝罪に行こうと思うんだけど、何が好きかな? お詫びも兼ねてお菓子でも用意したくて」
「あーえーと、気持ちは嬉しいんだけど、それは良いですから」
篠塚先輩は表情こそ凍っているけど、兄貴と広瀬先輩の話し合いを大人しく聞いていた。
そうだ、それでいい。
篠塚先輩、そのまま大人しくしてろよ。自分のためにも、騒ぎを大きくするな。
オレがそんなことを考えている間にも、広瀬先輩と兄貴は押し問答を繰り広げていた。
「だけど、それくらいはさせなきゃ申し訳が立たない」
「や、逆がハルが気に病むから、むしろ勘弁して欲しい」
「いや、でも、きちんと謝らないと」
「えっと、一ヶ谷くんには既に謝罪してもらっていて、ハルも納得してるんで」
「じゃあ、篠塚さんだけでも」
「いや、むしろ会いたくないだろうっていうか……」
その言葉に、兄貴はハッとして広瀬先輩を見返した。
「牧村さん……相当、怒ってる、よね」
「いえ、別に怒ってないですよ。ハルはホント、普段からほとんど怒ったりとかしないんで。
ただ、やっぱり、もうそっとしておいて欲しいとは思ってるはずだから。
正直、これ以上、煩わせないで欲しい」
「それは、広瀬くんの意見?」
「……まあ、そうですね」