13年目のやさしい願い

その時、篠塚先輩がボソッとつぶやいた。



「……過保護」



って一言。

わあああっ! バカ! 聞こえたらどうするんだ!!

小声だったから聞こえなかった……と信じたかったけど、瞬時に広瀬先輩の顔が強張った。

それから、広瀬先輩はおもむろに篠塚先輩の方に視線を向けた。



「あのさ。何も知らないで、勝手なこと言わないでくれるかな?」



広瀬先輩は激昂するかと思いきや、ビックリするくらい落ち着いていた。



「確かに過保護だろうね。

オレは、ハルに少しでも元気でいて欲しいし、いつも笑顔でいて欲しいから」



広瀬先輩は冷静に怒っているのかと思ったけど、違うらしい。
多分、篠塚先輩を見つめる表示から垣間見えるのは、『呆れ』。

でも、そこに投げやりな空気は一切なく、静かな圧力に気圧されて、篠塚先輩も何も言い返せずにいた。

広瀬先輩はオレに、奥の椅子に移動するように言い、オレの隣に座ると兄貴にも椅子を勧めた。

程なく、ウェイトレスがやって来て、頼んだ覚えのないアイスコーヒーが4つ置かれた。

広瀬先輩は、それをオレたちに勧めてから、自分も口を付けた。



「あのさ、あんたが軽い気持ちで乗り込んで来た、あの後、ハルは救急車で病院に運ばれて、一週間入院したんだよ。

知ってた?」
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