13年目のやさしい願い

篠塚先輩が怪訝そうな表情を隠しもせずに表にあらわす。

いったい、何の話かと。

……原因が自分かもしれないって、少しは思わないのか!?

オレに言えた義理じゃないかもしれないけど、篠塚先輩の態度はあまりに失礼だった。

確かに、オレたちは陽菜ちゃんを直接害した訳じゃない。せいぜい、言葉で追い詰めようとしただけだ。

そして、篠塚先輩は途中で逃げ帰ったから、陽菜ちゃんが倒れるところは見ていない。

だけど……この話の流れで、どうして自分のせいじゃないと思える!?

怒りにかられて、オレがムズムズしているのを感じたのか、兄貴がオレの方を見た。

そして、机の上に置いた手を少し浮かせて、静かに聞いておけ、とオレを制した。

おかげで少し冷静になれた。



篠塚先輩も悪い。

けど……これは、むしろオレの失態だ。

陽菜ちゃんが倒れた後、オレはちゃんとその事を篠塚先輩に伝えなければいけなかった。

オレたちが何をやってしまったのかを。



オレが心中で猛省を繰り広げる間にも、広瀬先輩の話は続いていた。



「あの日、ハルは体調が悪いのに頑張って登校して、でも授業は受けられずに朝から保健室で休んでたんだ」



広瀬先輩は、篠塚先輩の目をじーっと見つめた。

オレと、篠塚先輩の隣に座った兄貴は、広瀬先輩の次の言葉を静かに待つ。

篠塚先輩はどこか不遜な表情を垣間見せた。

そんな先輩を見ていられず、オレは徐々に居たたまれなくなってきた。
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