13年目のやさしい願い
そうして、オレは明兄が頼んでくれたらしいアイスコーヒーを飲み干すと、席を立った。
「じゃあ」
一言いって軽く手を上げ、その場を離れた。
パーティションの裏側で、明兄と合流。
長居は無用だ。
「お待たせ」
そう言いながら、伝票を取る。
「お疲れ」
と珍しく労われ、思わず、まじまじと明兄を見てしまった。
「何だよ」
「いや、何も」
「……大丈夫だ。これ以上、何もしない」
別にそこは心配してない。
明兄も、ハルを悲しませるようなことは絶対にしないんだ。
「あの女が、バカな気を起こさなきゃな」
オレは思わず苦笑いをもらした。
「さすがに、もうしないんじゃない?」
防犯カメラの映像に、校長の話、それから、篠塚がオレとハルの悪評を広めようとした事実……を押さえた報告書。
そう言えば、証拠の品々は一ヶ谷兄弟には見せたけど、篠塚には見せていない。
本当に大丈夫……だよな、と思っていると、明兄が黒い笑みを浮かべた。
「まあ、大丈夫だろうな。
レポートや写真のコピー、あの女の家に発送しておいたから」
思わず絶句。
続いて、思わず拍手をしていた。
「お見事! さすが明兄、抜かりないわ〜」