13年目のやさしい願い
☆ ☆ ☆
「ハル、ベッドで寝よう」
今日も、おばさんもおじさんも仕事の牧村家。
出かけていた明兄がオレを伴って帰宅し、昼食に同席すると知って、ハルはとても喜んでいた。
「今日は食が進みますね」
と、沙代さんに言われるくらい、ハルは元気だったけど、食後、リビングに移動しておしゃべりをしている内に、ソファでうとうとし始めた。
「陽菜、風邪引くから、ベッドに行こう」
明兄の声にハルがうっすら目を開けてにこおっと微笑んだ。
だから、ハル、なんで実の兄貴にそんなとろけるような笑顔を見せるんだよ。
思わず嫉妬心丸出しで、眉間にしわを寄せると、明兄が隣でプッと吹き出した。
悔しいから、明兄に取られない内に、ハルをすっと抱き上げた。
「ハル、部屋行くよ」
今度は目を瞑ったまま、ハルはにこりと微笑んでくれた。
小さく唇が動く。
囁かれたのがオレの名で、更に笑顔が明兄と遜色なかったのでオレは溜飲を下げた。
「ニヤけるな、バカ」
明兄がハルに届かないよう、小さな声で言った。