13年目のやさしい願い
「え、じゃあ、借りたんじゃなく、」
「そ、出資してもらった」
「利回りは?」
「企業秘密」
「えっと、……儲けてるんだよね?」
「じいさんが出資金を増やしたがるくらいには」
「幾らくらいから始めたの?」
明兄は開いたままだった新聞を閉じ、オレの顔をまじまじと見た。
「やけに真剣だな」
「うん。教えて!」
気合いを入れて頷くと、明兄は眉根を潜めてオレの顔を見た。
「まずは自分で勉強しろ。試験に合格したら教えてやる」
「ええ!? 試験って、何!? 投資するのって資格いるの!?」
「いらない。試験は面接。面接官はオレ」
呆気にとられて、まじまじと明兄を見ると、明兄は面白そうに笑った。
「金のなる木を育てるのが、そんなに簡単なわけないだろ? それに、そう簡単に教えると思うか?」
「だよね〜」
「だから、まず自分なりに勉強しろ。話はそれからだ」
「了解っ」
明兄はそのまま、読みかけの新聞を再度開き、目を落とした。
「……あ、そうだ!」
数分も待たずに、ねえねえ、と話しかけると、うるさいなぁとばかりに、明兄は新聞から目を離さないまま返事をした。
「今度は何?」
「あのさ、どうやって校長室、借りたの?」
「ああ、将棋仲間なんだ」
オレの疑問ももっともと思ったか、こちらはすぐに教えてくれた。
「は?」
「桐谷先生だろ。中等部の時の将棋部の顧問だった」
「え!? 校長って、中等部にいたの!?」
「お前が入学する前にな」