13年目のやさしい願い
「オレはね、数字の一にケ、それから谷。さとるは、覚悟の悟」
と言って、
「分かる?」
と、まだ握っていたわたしの手を持ち上げ、手のひらを上に向けて、そこに自分の名前を書いた。
「変わった名字だね」
「うん。珍しいよね」
その一ヶ谷くんが、持っていた鞄を地面に下ろして、わたしの手を両手で包んだ。
「陽菜ちゃん!」
「は、はい」
「オレ、一目惚れしたみたい!」
「…………え?」
いったい、何が起ったのか分からず、目を丸くするわたしに、一ヶ谷くんはとんでもないことを言い出した。
「陽菜ちゃん、オレと付き合って!」
……え?
なに?
あまりに突然のことに、わたしの頭の中はパンク寸前で、
わたしは目を見開いて、
ついほんのさっき初めて会ったばっかりの一ヶ谷くんの顔を
ただ呆然と見るしかできなかった。