13年目のやさしい願い

なるほど。

そういう繋がりなら、多少の無理が通るのも分かる。



「そっか〜、明兄、将棋部だったんだ」



ハルのじいちゃんが将棋好きで、その影響で明兄も子どもの頃から将棋を指す。

オレもハルと一緒に教えてもらったけど、腕は全く上がらなかった。

ハルはどうだろう? オレとはしないけど、もしかしたら、じいちゃんに付き合って、たまには指しているのかも知れない。



「明兄、将棋強いもんな〜」

「普通だろ?」



明兄は笑う。

え? もしかして、オレが弱いだけ?

いやいや。
この何事においても完璧主義者の明兄が弱いわけない。



「将棋部って地味だろ? 入る気なかったんだけど見学会で誘われて一局打って、その後、口説かれまくって、そのまま入部。

オレのおかげで、3年間部員集めに苦労しなかったって、喜んでくれてね。

今でも帰省すると会うし、将棋も指すし、桐谷先生があっちに来ると飲んだりする仲」



明兄はもうオレとの雑談に付き合う気はないらしく、視線を落とすと新聞のページをめくった。

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