13年目のやさしい願い

オレはお茶の入ったコップを片手に、ハルの部屋に移動した。

セミダブルのベッドでは、淡い色の小花模様の掛け布団に包まれて、ハルがすやすやと眠っていた。



顔色は悪くない、呼吸も正常。



つい、そんなところを確認してしまう。

そっとハルの頬に手を触れてから、ハルの枕元にイスを持って来て座る。

倒れて2週間、退院して1週間。

ハルの入院は、自分ちの病院という事もあって割と日常茶飯事だけど、1週間もと言うとやはりそうはない。

一番気候がの良い季節の1週間のロス。

ハルは何も言わないけど、本当は嫌だっただろうな。

ハルの柔らかい髪にそっと手を触れる。
そのまま、頭をなでて、頬をなでて、そっと頬にキスをした。



「……ん」



ハルが身じろぎしたので、慌てて唇を離した。

せっかく気持ち良く眠ってるんだ、起こしたくない。

布団の端から見えるハルの手首は、折れそうに細い。

二週間前の入院騒動で減った体重が、ようやく戻り始めたところだ。
来たるべく夏に備えて、体力はできる限り戻しておきたい。

ゴメンね、ハル。
オレが一緒にいたのに、入院するような事態になっちゃって。

ハルはそんな言葉、喜ばない。
だから言わないけど、オレはやっぱり、ちゃんと守れなかったことを後悔しているんだ。

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