13年目のやさしい願い
わたし……なに、やってるんだろう?
カナに会いたくなくて、30分も早く登校して、
カナと手をつないで歩くかわりに、
初対面の新入生に手を引かれて……。
……はぁ、はぁ。
息が上がる。
歩く速度が速すぎて。
手をしっかり握られているから、
その手を力強く引かれるから、
いつものゆっくりしたペースでは歩けない。
きっと、高校生の男の子なら普通の速度で、
もしかしたら、女の子でもおかしくないかもしれない速度で、
わたしの手を引き、一ヶ谷くんは歩き続ける。
でも、それはわたしには速すぎて、
走っているわけでも、階段を上っているわけでもないのに、息が上がってしまって……。
途中で、荒い息の下、「待って」って言ったけど、
わたしの声は小さすぎたみたいで、
ズンズン歩く一ヶ谷くんの背中には届かなかった。