13年目のやさしい願い
どうして道も知らないのに、こんな迷いなく歩けるんだろう……、
そう思いながら、
なんで、わたし、こんなところを初対面の子と手をつないで歩いてるんだろう……、
って、思いながら、
とうとう、前方、遠くに人だかりが見えたところでギブアップした。
急にしゃがみ込んだわたしに、一ヶ谷くんが慌てて振り向く。
「え!? 陽菜ちゃん!?」
驚いた声が上から降ってくる。
それでも、掴んだ手は離してくれない。
「……ご、め…」
「大丈夫!?」
心配そうな声と一緒に、彼に握られて高く持ち上げられていた腕が身体の側に戻ってくる。
一ヶ谷くんの声が近くなった。
ようやく、つないだ手を離してもらえた。