13年目のやさしい願い
でも、今、カナはいない。
だから、こんなところで倒れたら大事になる。
入学式の日なのに。
……迷惑かけたくない。
気持ち悪い。
この意識は、いつまで保てば良いんだろう?
「……ハルちゃんっ!?」
遠くから、よく知った声が聞こえた。
少し低い、優しい声。
ううん。
いつもは優しいのに、今日は驚き、強ばっていた。
「大丈夫!?」
羽鳥先輩。
ホッとした。
自分のためにというより、一ヶ谷くんのためによかった……って。
羽鳥先輩なら、きっと何とかしてくれる。
「あ。あの……貧血だって」
一ヶ谷くんが戸惑いながら答えてくれる声が聞こえた。
先輩の手が背中にそっと当てられた。
……暖かい。
「ハルちゃん、貧血ってホント?」
その声に小さく頷いた。