13年目のやさしい願い
「よし。なら、保健室に行こう」
先輩は優しくそう言って、スッとわたしを抱き上げた。
「キミ、新入生だね? クラス分けの表、あそこだから、確認して教室に行きなさい」
「え、でも」
「まだ時間はあるけどね。入学早々遅れたらコトだろ」
「あの。……陽菜ちゃんは?」
「先生には言っとくからいいよ。ほら、ハルちゃんの鞄貸して」
テキパキと采配を振るう様子が目に見えるようだ。
昨日から3年生。最上級生の羽鳥先輩。
去年の終わりからは、生徒会長。
……そうだ。
先輩、何でこんな時間にこんなところにいるの?
今日は忙しいはずなのに。
……受付、ここでやってたっけ?
去年のことを思い出そうとするのに、何も思い出せない。
気持ち悪くて、深い思考に入れない。
「ハルちゃん、すぐに保健室に連れて行ってあげるからね。苦しいだろうけど、少し我慢してね」
いつものように、優しい優しい先輩の声。
忙しいのに、お世話かけてごめんなさい。
声に出して言いたいのに、言えなかった。
程なくして、先輩の腕に抱かれながら、わたしの意識はスーッと闇に飲まれていった。