13年目のやさしい願い


目が覚めたら、カナがいた。

カナが心配そうに、わたしの手を握っていた。



「ハル!」



ほっとしたように、カナが小さく息を吐いた。



気持ち悪さが治まっていない。

胃の辺りはむかむかするし、

身体は依然重いままで。



「……い、ま、なん、じ?」



ささやくように聞くと、カナは腕時計をチラッと見て、



「8時20分」



と言った。

ああ、まだ貧血を起こしてから、あまり時間が経っていない。




「入学……式」

「ああ、行かなきゃな。……ハルは寝てな。先生には言っとくし」



目が覚めて良かった、安心して行ける、ってカナはわたしの頭をなでた。



「顔色……悪いな。今日は帰るか?」

「……ううん。少し、休んでから、行く」

「分かった。入学式が終わるまで、ゆっくり寝てると良い」

< 49 / 423 >

この作品をシェア

pagetop