13年目のやさしい願い
目が覚めたら、カナがいた。
カナが心配そうに、わたしの手を握っていた。
「ハル!」
ほっとしたように、カナが小さく息を吐いた。
気持ち悪さが治まっていない。
胃の辺りはむかむかするし、
身体は依然重いままで。
「……い、ま、なん、じ?」
ささやくように聞くと、カナは腕時計をチラッと見て、
「8時20分」
と言った。
ああ、まだ貧血を起こしてから、あまり時間が経っていない。
「入学……式」
「ああ、行かなきゃな。……ハルは寝てな。先生には言っとくし」
目が覚めて良かった、安心して行ける、ってカナはわたしの頭をなでた。
「顔色……悪いな。今日は帰るか?」
「……ううん。少し、休んでから、行く」
「分かった。入学式が終わるまで、ゆっくり寝てると良い」