13年目のやさしい願い
1.なつかしい手紙
春休みも、後半となったその日。
「お嬢さま、お手紙が届いてますよ」
部屋で休憩していたら、沙代さんが、シンプルな空色の封筒を持ってきてくれた。
沙代さんは、わたしが生まれる前から、うちにいるお手伝いさん。
ママよりは年上で、おばあちゃんよりは若い。
お料理が上手で、くるくる、くるくる、いつも笑顔で何かをしている。
わたしは、優しくて明るい沙代さんが大好きだ。
うちは、ママも仕事をしているから、家のことは全部、沙代さんと、もう一人の通いのお手伝いさんの2人がする。
「ありがとう」
誰かしら?
と、封筒を受け取り差出人を見ると、1年ぶりくらいに見る名前が書かれていた。
驚いて、まじまじと、何度もその名を見返してしまった。
「裕也くん」
早速、封を切って、中から手紙を取り出した。