13年目のやさしい願い
ハルは、親父には、
学校に、オレと同じクラスにしろって圧力をかけないで欲しい、
って頼んだらしい。
ハルは、それが別クラスを確定する頼みごとだと気づいていなかった。
気づいていないのなら幸いだ。
親父が口出しをしなかったけど、学校側が相談してオレたちを同じクラスにしてくれたのだと、そう思っていてくれたのなら好都合。
後一回、来年一回乗り切れば大学生だ。
そこからは、こんな小細工は不要で、オレは学部をどうするかとか、どの授業を取るかとか、そういうことをハルと相談すればいい。
ハルは大学で、何を専攻したいんだろう?
親父は兄貴と同じ経営学部をって言うけど、悪いけどオレにその気はない。
オレが選ぶのは、ハルが選ぶ学部だ。
すべてはハルのために……ってのは、オレの中で決して変わることのない価値観。
「おまえを説得するより、陽菜ちゃんを説得する方が早そうだな」
親父は苦笑いしていたが、オレは本気で言い返した。
「そう言うの、ぜったい、やめてくれよ」
「はいはい」
親父は笑っていた。
その目が面白そうにオレを見ていたから、今のところは大丈夫だと思っている。
けど今後、要注意だ。