13年目のやさしい願い
ここ数日見ていないハルの笑顔を思い浮かべつつ、
裏口前の階段に座って待っていると、
いつもの30分前、7時40分にハルの乗った車が到着した。
「おはよう」
裏口の外にオレの顔を見つけて、驚いたような顔をするハル。
その顔は予想通り、ぜんぜん嬉しそうではない。
始業式の日の午後、並んで庭先を散歩した時には、あんなに心が通じ合っていると思ったのに。
あれは、たった二日前のことなのに。
気に入らないことがあるなら、遠慮なく言ってくれたらいいと思う。
だけどハルは、どちらかというと言葉を飲み込んでしまう方だ。
熟考してからしか言葉にしない。
何ていうか、そんなところはオレとはまったく違って、かなり思慮深い。