13年目のやさしい願い
オレの脳裏に、羽鳥先輩の顔が浮かんだ。
思えば、羽鳥先輩が、ハルとあんなに仲が良かったことも、
ハルのことを好きだったことも、
去年のオレは、まったく知らなかった。
「もう、大丈夫だから」
「本当に?」
「うん。……驚いたでしょう? ごめんね」
ハル、何のこと?
まるで話が見えない。
「いや、オレこそ、ごめんね」
そいつが申し訳なさそうに謝る。
たまらず、オレは再度口を挟んだ。
「ハル!」
ハルは隣のオレを見上げて、それから目の前のそいつを見て、
「わざわざ、ありがとう。もう大丈夫だから」
と、また笑った。
心からの笑顔ではない。
それは分かった。
でも、気に入らなかった。