13年目のやさしい願い
「ハル!」
オレはハルの肩を抱いて、教室に入ろうと促した。
オレの行動は、紛れもなく嫉妬心から出たものだった。
ハルが他の男子と話していたからって、そんなことを気にするオレじゃなかったのに。
ハルと何となくうまくいっていない、すれ違っている感がある今、
オレの知らない別の男と、あまつさえ「陽菜ちゃん」なんてハルを呼ぶ男と、
笑顔で話すハルを暖かく見守るなんて、できなかった。
タイミングが悪すぎた。
……いや、相手が悪かったというべきなのか?
「陽菜ちゃん、コレ、陽菜ちゃんの彼氏?」
そいつは挑戦的な目で、オレを見た。
コレとはなんだ、コレとは。
仮にも先輩だぞ!?
と、にらみ返したが、そいつは鼻で笑いやがった。
ハルが小さく頷いた。
コレ、陽菜ちゃんの彼氏? への回答。
……良かった。
オレ、まだ、ちゃんとハルの彼氏だった。
そこでホッとする辺り、オレも気が小さい。
別れ話なんて、カケラも出ていないのに、ハルに冷たくされただけで、もうダメ。