13年目のやさしい願い
一ヶ谷くんが教室に来るようになって、四日目。
ようやく口を挟むカナを制して、一ヶ谷くんに言うことができた。
「あのね。どれだけ来てもらっても、わたし、一ヶ谷くんとはつきあえない」
「何で?」
入学式の次の日に、カナが恋人だっていうのは伝えた。
だけど、ちゃんと「つきあえない」って答えていなかったかもしれないと思って、言ったのだけど……、
その返事が「何で?」だった。
……何でって。
「もう、つきあっている人がいるから」
「別れるの待ってるよ」
一ヶ谷くんは笑顔で言う。
……待たれても困るよ。
わたし、カナが好きなの。
「……別れないよ」
「どうして?」
カナが好きだからに決まってる。
でも……口にするのは恥ずかしくて、
思わず、そっとカナの手を握った。
カナはきゅっとわたしの手を握り返すと、つないだその手を、一ヶ谷くんに見せつけるように持ち上げた。