13年目のやさしい願い
「ああ。でも、今日は通院。
終わった後、病棟に寄ってるはずだから迎えに行くんだ」
「絵本の読み聞かせだったっけ?」
「そ。後、よく折り紙折ったり、工作したりしてる」
ハルは小さい子が好きだ。
入院中でも調子がいい時は、よく小児科の大部屋やプレイルームで、子どもたちと遊ぶ。
あと通院が終わった後とか、長期の休みの時とかにも、病棟に顔を出すんだ。
そういうボランティアもあるらしいけど、ハルはたぶん、ボランティアだと思っていない。
小さい頃、同じように、優しいお姉さんに遊んでもらってすごく嬉しかったから、自分もやるんだって言う。
「陽菜ちゃんだっけ。いい子だよな~」
「だろ?」
思わず顔がゆるむのを見て、淳は笑う。
オレは子どもの頃から、いつだってハルのことばっかりだったから、以前はよくからかわれていた。
会わせろ会わせろって、あんまりうるさいから、去年一度会わせたら、それからはからかわれなくなった。
「じゃ、また来週!」
「ああ! またな!」
オレは淳に手を振ると、ペダルをグッと踏み込んだ。