13年目のやさしい願い


ただでさえ、そんな不安定な状況なのに、ハルに横恋慕中の一ヶ谷は連日、ハルの元を訪れる。



もう、カンベンしてくれよ!



って思いつつ、オレはハルについて一ヶ谷を追い払いに行く。



朝は待ち伏せで、



「陽菜ちゃん、おはよう!」



だし、昼休みにもほぼ毎日やって来て、



「牧村先輩、お願いします!」



と元気に呼び出し、

ハルが行くと、「牧村先輩」ではなく「陽菜ちゃん」と呼ぶ。



ハルに一体どういうことか聞いても、



「入学式の日の朝に会ったの」



としか言わない。



オレがおいてけぼりを食ったあの日。

ハルが貧血を起こして倒れたあの日。



教室に初めて来た時の「ごめんね」は何? って聞いたら、



「裏口に迷い込んでいたから、クラス発表の場所に案内しようとしたの」



とハルは言う。

そこへ向かう途中で貧血を起こしたらしい。

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