13年目のやさしい願い
ハル。
「カナ?」
入院病棟へ向かって歩いている時、呼ばれた気がして振り返った。
空耳?
カナ、今日は迎えに来てくれると言っていたから。
早く着いたのかなと思ったのだけど、視界のどこにもカナはいなかった。
カナ。
ごめんね。
最近、ぜんぜん、うまく笑えない。
カナが気にしていること、分かってる。
いつまでも、終わったことをウジウジ考えたくはない。
だけど、忘れられない。
来年、もう一度、クラス替えがある。
その時も、カナはわたしと同じクラスを望むのだろうか?
来年は、おじさまに頼むのだろうか?
それとも、パパに?
今さら、言ってもムダだと分かってる。
だから、もう、カナには何も言っていない。
だけど、忘れたわけではない。
そこまで、こだわるようなことじゃない。
どうでも良いことだって、分かってるはずなのに、
どうして、割り切ることができないんだろう?