13年目のやさしい願い
「今日の絵本、何!?」
「何だと思う?」
わたしの手提げ袋を覗き込むのは、点滴を付けて歩く男の子。
新しく見る顔もいる。
それでも、春休み中は検診日以外も来ていたから、大体知っている顔ぶれ。
新しい子も、わたしのこと、聞いていたのかな?
もじもじしながらも、笑いかけると笑顔を返してくれた。
ベッドから動けない子の周りに、自然と子どもたちが集まる。
わたしが、そちらの方に絵本を向けるのを知っているから。
今日は、ベッドから降りられない子は一人だ。
交通事故で足と肋骨を骨折して、まだ自由には動けない男の子。
この前に来たときよりは、ずいぶん顔が明るい。
よかったね。
「最初はね……」
と、大きな絵本を取り出すと、
「あ! 妖怪ひとつ目くんだ!」
と、この話を知っている子が声を上げた。
わたしはニッコリ微笑んで、スウッと息を吸ってから読み始める。
「むかーしむかし、ほんの少し昔、こーんな変わった妖怪がいました」