13年目のやさしい願い
だけど、わたしがここで読むのは楽しい絵本、幸せな気持ちになれる絵本。
現実世界は楽しいことばかりじゃない。
そんなこと、わざわざ絵本から教えてもらわなくても、きっと、この子たちは知っている。
ここは完全看護だから、よほどのことがないと夜には家族は帰ってしまう。
ツライ治療がある子もいる。
数ヶ月に渡る長い病院暮らしをする子もいる。
退院して、また戻ってくる子も……。
突然、同室にいた子がいなくなる……、長くいるとそういう恐怖も味わう。
だから、楽しくて明るい絵本。
少しくらい忘れたっていいじゃない?
ツライ現実なんて……。
「……と言うわけで、3人は末永く、幸せに暮らしました」
最後の言葉を読み終えて、パタンと絵本を閉じると、
子どもたちの小さな手による、可愛らしい拍手が病室に響いた。