13年目のやさしい願い


「陽菜」



二冊読み終わったところで、病室の入り口の方から、わたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。

見ると、そこにはママが立っていた。



……え? なんで?



白衣を身に着け、ポケットには聴診器、胸にはネームプレート。

完全にお医者さんスタイルのママに、手招きされて立ち上がる。

ママのところに向かおうとすると、思い直したように、ママがわたしの方にやってきた。

そうして、ママはわたしが持っていた絵本をそっと袋に戻すと、袋をそのまま手に持った。



「……ママ?」

「ちょっと、一緒に来て」

「え? なぁに?」



戸惑うわたしへの返事は後回しにして、ママは病室の子どもたちに言った。



「ごめんね。お姉ちゃん、急用だから今日はここまでね」


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