緋龍と偽姫
2週間後…緋那ちゃんは目を覚ました。
「麗!緋絽は!」
緋那ちゃんはしゃがれた声のまま、麗に言う。
「緋絽は無事だ。
かすり傷程度だ」
緋那ちゃんは微笑んだ。
「緋那…すまない。
お前の…左目を奪っちまった…」
麗は緋那ちゃんに頭を下げた。
「麗、謝らないで…。
これは私の勲章!
だから…嬉しい」
緋那ちゃんはそう言って麗を抱きしめた。
麗は声を殺して泣いていた。
―コンコン。
病室のドアがノックされた。
「どうぞ…」
緋那ちゃんが言うと、ドアが開いた。
「お嬢さん、初めまして。主治医の佐野です。
お話良いかな?」
緋那ちゃんは頷く。
「まずは、お嬢さんの左目は…失明を免れませんでした。
右目だけなので、距離感とか掴みにくいと思います。
訓練しましょう。
後…。
右足は…もう…普通には動きません。
装具を使えば普通には歩けます。
使わない時は…車イスの生活が楽だと思います」
佐野医師が言うと緋那ちゃんはただ笑っていた。