緋龍と偽姫


2週間後…緋那ちゃんは目を覚ました。


「麗!緋絽は!」


緋那ちゃんはしゃがれた声のまま、麗に言う。


「緋絽は無事だ。

かすり傷程度だ」



緋那ちゃんは微笑んだ。


「緋那…すまない。

お前の…左目を奪っちまった…」


麗は緋那ちゃんに頭を下げた。



「麗、謝らないで…。

これは私の勲章!


だから…嬉しい」


緋那ちゃんはそう言って麗を抱きしめた。


麗は声を殺して泣いていた。






―コンコン。





病室のドアがノックされた。




「どうぞ…」



緋那ちゃんが言うと、ドアが開いた。




「お嬢さん、初めまして。主治医の佐野です。


お話良いかな?」




緋那ちゃんは頷く。





「まずは、お嬢さんの左目は…失明を免れませんでした。


右目だけなので、距離感とか掴みにくいと思います。


訓練しましょう。




後…。



右足は…もう…普通には動きません。


装具を使えば普通には歩けます。


使わない時は…車イスの生活が楽だと思います」




佐野医師が言うと緋那ちゃんはただ笑っていた。





< 41 / 53 >

この作品をシェア

pagetop