きっと、これは
 放課後になり、私は三階にある図書室を目指し、足早に歩いていた。
 武本が残した意味深な言葉の意味を知りたくて。
 授業中や休憩時に何度か尋ねたけれど、適当に笑うだけで、それ以上は教えてくれなかった。
 本を大事に抱えながら、階段を上って行く。
 少し遅くなってしまったけれど、まだ図書室は開いているだろうか。もし開いていたとしても、生徒は誰もいないかも知れない。そんなとこに私が行く意味なんてあるのかな……。
 

 図書室に到着すると、まだ電気が点いている事に気付いて、ほっとする。
 がらっと扉を開けて中に入ると、予想通り、生徒は誰も居なかった。居たとすれば、図書委員で今日が当番の人だろう。 
 でも、見渡してみるけど誰もいない。
 どうしよう……。
 図書カードに書き込みをするのも管理をするのも、図書委員と司書の仕事だから、勝手に自分でやってしまってはいけないだろう。
 私は司書らが戻って来るのを待つ事にし、その間暇になるから、面白い本でも探してみようと室内を歩き回った。
 すると、どこか奥の本棚から、ごそごそと本を並べているような音がした。
 あ、誰かいたんだ……。
 良かった、独り言言ってなくて。と、変な所の心配をしてしまった。
 司書ならすぐに声を掛けて帰りたいが、覗き込んでみて生徒だったら嫌だから、気付かないフリをする事にした。

「あ」

 本棚をごそごそとしていた誰かは、その作業を終えると、こちらに向かって歩いて来た。
 誰か、が零した声には気付いたけれど、私はその誰かにわざと背を向ける形で立っていた為、いちいちそれに振り向く事はしなかった。

「……池内、先輩?」

 聞き覚えのある、声だった。
 それに、私の名字を呼んでいるから、振り向かない訳にはいかず。

「笠井、君……!」

 私はそこに立っていた人物を見て、酷く驚いた。
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