氷がとけるように。
「行くぞっ」


タクシーが信号を曲がり見えなくなり工藤が私の手を取り歩き出した。


どこに行くの?


そんな事も言える雰囲気じゃない。
こんな強引な工藤は初めてだった。


掴んでるのか、握られてるのか、繋いでるのかわからない工藤の手を見る。


だけど触れてる手は確実に工藤の手で…。
私の手を包んでいる。


「ちょっと待ってて」


小さな公園に着いた。
街灯でブランコがあるのが見える。


待っててと言った工藤はすぐ戻ってきた。
近くの自販機でミネラルウォーターを2本買ってきた。


1本を私に渡し、丸太で出来た椅子に座りフタを開け飲みだす。


一連の工藤の行動を少し離れた所からずっと見ていた。


両腕を両足にのせ俯いている。


「木村ー」


うつ向いたまま静かに口を開いた。 


















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