氷がとけるように。
「そうだっ、美味しい饅頭貰ったんだよ。山下君、甘い物好きかい?」


「はい、好きです」


冷蔵庫に饅頭を取りに行く社長と入れ代わりにソファーの隅に腰掛けた。


「お疲れ様です。もう、終わったんですか?」


金銭面の私には解らない難しい話。


「うん、終わった。…敬語だと距離感じるな」


フッと笑ってお茶を飲む山下君。
私も淹れたての熱いお茶を飲んだ。
お茶の薫りって好きだな。
なんとなくホッとさせる。


「富田さんが言ってたけど木村さんが入れてくれるお茶、美味しい」


「…ありがとう。これでもOLの端くれ11年してましたから」


ちょっぴり自慢げに言い、アハハと2人で笑った。


美味しいと言われて嬉しかった。
お茶出しは女性の仕事って強制的にさせられるけど女性の細やかな気遣いで味が全然変わってくる。


その気遣いを気付いてくれた感じが嬉しかった。





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