氷がとけるように。
「若い者同士、楽しそうだね。
はい、山下君。と七海ちゃんの分」


黒糖饅頭を私達に渡す。
お土産で貰った饅頭を奥さんと2人じゃ食べ切れないからと持って来ていた。


「いただきます」


「社長、いただきます」


丁寧に紙を開いて口に運ぶ。甘さ控え目で美味しい。


「山下君はまだ独り身?」


「はい、独身です」


始まった。
社長の尋問。


私も働き出した頃に根掘り葉掘り聞かれた。
無下に出来ないしそうと言って細かく説明するのもなんだかなーと思いボヤカシながら話した。


「でも、もういい人いるんでしょう?」


「…残念ながらいません」


社長、人のプライベート突っ込み過ぎと思いながら残りの饅頭を口に入れた。


「だったら七海ちゃんとくっついちゃったらいいと思うけどね」


社長の言葉に饅頭が喉に詰まりかけた。
イヤ、飲み込むタイミングを間違った。


苦しくなる喉に無理矢理、饅頭を飲み込んだ。





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