氷がとけるように。
「ねぇ、七海ちゃん」


呑気に私に聞いて来る社長。


喉の下を手で軽く叩きお茶で饅頭を流し込んだ。


ホォーー。
呼吸を整える。


ゆっくり隣の社長の方を向いた。


「…社長。山下君も困ってますしこの話は辞めましょうか?」


社長に言って聞かせるようにユックリと私の念を送った。


私の冷たい言い方にたじろいたのか


「えっ、そうかい。七海ちゃんが言うんじゃ仕方ないな」


アッサリと引き下がった。


このまま話を進める程、社長も鈍感じゃなかったみたいだ。


一連の会話を笑顔で聞いていた山下君。
恥ずかしくなり顔を上げられなかった。


もぉー、社長。
悪気がないのはわかるけどストレート過ぎるよ。


「山下君、兄弟は?」


「姉が1人います」


「長男坊か。
お父さんは何してる人?」


「建築関係のサラリーマンです」


この後も社長の質問は続いてた。
丁寧に答える山下君。
ピシャリと話を切る私とは正反対だ。





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