『22』
今日
カチッ
まだ春の名残のある風に線香の煙が靡く。微かな花の香りと線香の香りとが風の中で混ざり、ふわりと辺りを流れていった。
「久しぶり。」
長谷川家と彫られた墓を前にして、静かに手を合わせた。
まだ夏と春の間の季節だからか、爽やかな音と風が静けさを演じてくれていた。
「今年はちょい早いけど、報告がてら、な。」
ポケットから古びた小さな指輪を取り出す。日に輝くことはないけれど、空にかざしてみる。
「ついにこれを返す日が来たわ。5年も前の物をずっと持ってたなんて女々しいやろ?」
ふふっと笑う。その指輪を墓前にそっと置いた。
「あれから俺も色々あったわ。いっぱい恋もしたし、たくさんの友達も出来たし、楽しいことも色々した。お前が生きれなかった分、少しでも楽しんだわ。」
新緑の木々がさわさわと音をたてる。何処からか鳥の鳴き声もする。
「でも、俺もそっちいくことなったらしい。」
深く息を吸い込んでゆっくり吐いた。
「ゴメンな?意外と早かったな。」
笑い事かのように言う。なんでもないかのように。しかし、ほのかに悲しみを押さえるように。
まだ春の名残のある風に線香の煙が靡く。微かな花の香りと線香の香りとが風の中で混ざり、ふわりと辺りを流れていった。
「久しぶり。」
長谷川家と彫られた墓を前にして、静かに手を合わせた。
まだ夏と春の間の季節だからか、爽やかな音と風が静けさを演じてくれていた。
「今年はちょい早いけど、報告がてら、な。」
ポケットから古びた小さな指輪を取り出す。日に輝くことはないけれど、空にかざしてみる。
「ついにこれを返す日が来たわ。5年も前の物をずっと持ってたなんて女々しいやろ?」
ふふっと笑う。その指輪を墓前にそっと置いた。
「あれから俺も色々あったわ。いっぱい恋もしたし、たくさんの友達も出来たし、楽しいことも色々した。お前が生きれなかった分、少しでも楽しんだわ。」
新緑の木々がさわさわと音をたてる。何処からか鳥の鳴き声もする。
「でも、俺もそっちいくことなったらしい。」
深く息を吸い込んでゆっくり吐いた。
「ゴメンな?意外と早かったな。」
笑い事かのように言う。なんでもないかのように。しかし、ほのかに悲しみを押さえるように。