~天使ロード~
「大丈夫か?里中…」


「うん、もう平気」


そっと体を離す佐藤くん。
佐藤くんの目元には何か涙らしき粒が、きらんとその一部を光らせている。


これって小さな涙?


私はそれ以上の勘繰りを働かせなかった。



もう少しだけ抱き締められていたかったのが、私の本音。



「あのさ、里中、俺…」


「うん、どうしたの?」


「俺………」


「ゆっくりで良いから話してみて」


佐藤くんは一瞬大きく深呼吸すると、突如黙り込んでしまった。


「ごめん…
途中まで話しといてごめん…
やっぱり今は話せない
俺の心の整理がついたら、ちゃんと話すから」


「うん、分かったよ!
その日が来るのを待ってるね!」


私は、声のトーンを変えず明るくそう言う。



結局私に話したかったことって、何だろう…?


気になるけど…
ここは一先ず我慢だよね。


私も我慢強い人にならなくちゃ…






そして、私達が倉庫に閉じ込められて…
約一時間の時刻が、外の明闇とともに流れた時…







ある事件が私の元にやって来る。
< 29 / 293 >

この作品をシェア

pagetop