声を聞くたび、好きになる
流星に電話をかけたけど、圏外に居るのか電源を入れていないのか、流星のスマホは無反応に終わる。
「……幼なじみなんだから、会いに行けばいいんだ…!!」
スマホを自室に置いたまま、私は手ぶらで家を飛び出した。
流星が仕事を休んでいるなんて、よほどのこと。このまま声優を辞めるつもりかもしれない。
息を弾ませ、走る。
5分もしないうちに、私は流星の自宅前に着いた。
こんなに近いのに、なぜ1回も会いに来なかったんだろう。なぜ、流星は私を頼ってくれなかったんだろう。なぜ、流星の異変に気付いてあげられなかったんだろう……。
後悔の念が胸に溢れるのを感じながら、私は流星宅のインターホンを押した。指がわずかに震えてしまう。
『どちら様ですか?』
流星……!?
インターホン越しの声は、流星のものだった。それなのに、別人みたいに生気がなく、悪い表現をすると死にかけているようにも感じられた。
内側からにじみでる自信や前向きさが込められた流星の声はとても魅力的だった。それなのに、今彼が放った声音は、力強かったそれらの美点を全て削(そ)ぎ落としてしまったかのように無(む)そのもの。
「流星、私だよ!ミユだよ!」
『ああ、ミユか……』
「仕事休んでるって……。何があったの?」
『ネットでも話題になってるし、もう知ってるんだろ?』
人生終わったと言いたげな抑揚のない声が、こちらの悲しみを膨らませる。そんな流星、見たくない……!
「お願い、開けて!?話、しよ?」
『優しいな、ミユは。ちょっと待ってて』
力ない流星。全てから見放されたみたいに……。
ゆっくり、玄関の扉が開かれる。
「……っ!!」
姿を見せてくれた流星を見て、私は思わず一歩後ずさってしまった。
ハリのあった頬はげっそりとやつれ、髪にもボリュームが無く、瞳にも光がない。顔色もものすごく悪い。
「……体調、良くないの??」
「まあ、立ち話もなんだから入ってよ」
「う、うん……」
流星以外、家の中には誰もいないみたいだった。
他に人の気配がないので上がるのをためらったけど、あんなに毎日家へ来ていた流星相手に妙な警戒をするのも失礼な気がして、私は平然を装う。