声を聞くたび、好きになる
悪いことは続くけど、いいことも続くらしい。
モモと話したその日、流星からメールが来た。
《この間は乱暴なことしてごめん。ミユの蹴りで目が覚めた(笑)
声優の仕事、これからは自分のためにやってくよ。ミユにまた、かっこいいところ見せるためにね。
こんな話するのバカみたいかもしれないけど、昨日、収録の帰りに花崎華さんに告白された。今、同じアニメのアフレコしてるから帰りによく会うんだ。告白は断ったけど、友達になってみることにした。彼女、俺に憧れて声優になったんだって。ミユのことだけ考えて仕事してたけど、この仕事が思わぬところに影響与えてたんだなって、その時はちょっと感動したよ。
ミユを俺の彼女に出来なかったのは今でもつらいけど、もう大丈夫。幸せになれよ。幼なじみとして堂々と再会する日のため、俺も頑張るから。》
私も頑張るよ。頑張ってね、流星。
流星のメールを読んで、目が潤んだ。想いには応えられなかったけど、流星はたしかに私の初恋の人だった。心の中だけでなら、こう思ってもいいよね?
イラストを描けるという以外何も持たない欠点だらけの女だけど、私にはこの才能がある。海音が発掘してくれた大切なものだ。
「自分なんて……」と、卑下するのはもうやめよう。自分を大切にするんだ。
『明日休みになったから、今から行く』
「ほんと?嬉しい!待ってる」
初めてキスをした夜、私達は付き合うことになった。仕事に影響を出さないため公にはできないけど、事情を知る編集長にだけは本当のことを話した。
おかげで海音は、連休をもらいやすくなり、私との遠距離恋愛が体力的な負担になる心配は減った。